出演者インタビュー、第三回は「加藤比佐志」役の上村聡さん、「奈緒美」役の佐々木幸子さん、「道に迷っている旅行者の女」役の山村麻由美さんです。
楽しく談話しながらも、いろいろとうかがいました。どうぞご覧ください。
(聞き手・編集:牛尾千聖 撮影:橋本和加子)
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- 去年の12月よりコツコツと稽古を積み重ねてきましたが、いかがですか?
- 山村
- 人の演技をみてよく笑っていますね。みなさん年齢もバラバラで新鮮です。
- 佐々木
- ずっと緊張してましたが、やっと慣れてきました(笑)
- 上村
- いつもの遊園地再生事業団の現場は僕より年下の方が多いんですが、今回は大人が多いのでなんだか落ち着いて稽古してます。
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- 初めて『ヒネミの商人』の戯曲を読んだ印象はいかがでしたか?
- 上村
- 最近の宮沢さんの作品と違うなと思いました。セリフのひとつひとつが短くて、他人とどんどん会話をリレーしていくような感じがとてもおもしろいです。
- 山村
- 遊園地再生事業団は『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』という作品で一度出演させていただいているのですが、そのときの戯曲のイメージと全然違うと思いました。今回の『ヒネミの商人』は、普通の口語体の戯曲とも違うようで、なんというか、コントと普通の芝居の中間にあるような戯曲で不思議だなと思います。ただ読むだけで面白いから、演じるのはその分ハードルがあがるので、どう成立させて演じられるかを考えてます。
- 佐々木
- 私も最近の宮沢さんの作品と違うなと思いました。宮沢さんの昔の作品を読んでいなかったので、こういう本も書かれる方なんだと知りました。
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- 佐々木さんは遊園地再生事業団に初出演となりますが、いかがですか?
- 佐々木
- 今回、出演者のどなたとも共演したことがないんです。そういう現場は久しぶりで。どの現場でも必ず一人は一緒にお芝居したことのある方がいたのですが、今回は一気に知らない役者さん8人と共演できて、毎日勉強になってます。宮沢さんの演出も初めてで。
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- 初めての宮沢さんの演出はいかがですか?
- 佐々木
- もっといろいろ言ってほしいです(笑) まだ遠慮されてるのかな、とか思って。一言一言に全部ダメ出しして欲しいくらいです。でもこれから、ですよね。今は何を言われてもうれしいです。
- ───
- 山村さんは今回2度目の遊園地再生事業団の出演ですが、再び宮沢さんの演出をうけていかがですか?
- 山村
- 私にとって宮沢さんは大学の頃の先生でもあり、当時は授業発表公演などで演出を受けていました。最初に宮沢さんのもとで演技を学び、その後俳優として活動してきて今改めて思うことは、こんなに建設的な演出家はあまりいないんじゃないかということです。積み上げていくしかない、そして無駄がない。普通、演出に迷いがあって色々試して模索したりすると思うのですが、宮沢さんにはちゃんと答えがある。そういう方って中々いないと思います。私には把握しきれない宮沢さんの知識や経験でわかることがたくさんあるのだろうし、そういう演出家と現場を共にできることがありがたいです
- ───
- 上村さんは遊園地再生事業団に参加されて、今回初めて再演というものに出演されるのですが、今までと何か心境は違いますか?
- 上村
- 先日、初演のビデオをみせていただきました。今回僕が演じる「加藤」役を、初演では小浜正寛さんが演じられていて。当たり前だけれど小浜さんと僕は全然違うから、なぞらないようにしようと思うし、違うことはいいと思っています。宮沢さんは初演の経験も含め、色んな思いをお持ちだと思います。でも僕にとっては初めての公演ですから、あまり身構えず演出があればそれを理解するように頑張ろうと思います。
- ───
- 佐々木さんは「奈緒美」役ですが、演じていていかがですか?
- 佐々木
- 私の役の「奈緒美」は悪い意味でなく、いなくてもお話は進んでいくのだけれど、だからこそやらなきゃいけないことがあるかなと思ってます。他の役の方とは違う、私がやらなきゃいけない作業があると思っていて、今はそれを探っている感じですね。
- ───
- お話を進行させる人がいて、そしてさらにそこを通り過ぎる人がいるのといないのでは、だいぶちがいますよね。私、そういう役が大好きです。
いきなりですが、今回の稽古で意識されていることなどありますか? - 上村
- えっと……
- 佐々木
- ……上村さんは指がきれいです。
- 一同
- あははは!
- ───
- 指の意識はされているんですか?
- 上村
- してないですよっ
- 山村
- 上村さんって立つ時、斜め前というか前傾姿勢ですよね。
- 上村
- うん、なんかね、体が反ってるとすごく言われていて。なおそうと意識しすぎて加減がわからなくなっちゃったのかな。あと今、稽古中コンタクト入れてなくてあまり見えてないです。
- 佐々木・山村
- ふーん……
- ───
- じゃあ、上村さんは変なんですね。
- 上村
- 何が!?
- ───
- 体はおかしいけれど、指はきれい。
- 上村
- うーん、気をつけます。
- ───
- 佐々木さんの出演作、例えばチェルフィッチュや東葛スポーツでは、特定の役になるというより「発する」というイメージがあります。今回の『ヒネミの商人』では「奈緒美」という役ですが、舞台に立っているときの意識に変化はありますか?
- 佐々木
- 私は役を演じるほうが好きなので、今回とてもうれしいんです。
- ───
- そうなんですね、よかった。佐々木さんは初期の稽古のうちから、演技のプランをしっかり持っておられるようでした。
- 佐々木
- そうです、あざといんです(笑) 業が深い……
- ───
- そうなんですか! とてもおもしろいですね。
- 佐々木
- 私はガラスの仮面というマンガを読んでお芝居を始めたので、どうしても役になりきるのに憧れがあって。なるべく自分じゃない誰かになりたい、というのが強くて。だから今回は舞台に出る前にちゃんと役になる用意をしないと出れない状態ですね。チェルフィッチュだと、自分のままで出ているのでそんなことはないですが。それが全然違いますね。作業としてはどちらもおもしろいですが。
- ───
- 上村さんも役名があるお芝居は久しぶりですよね、役作りなどで考えていることがあれば教えてください。
- 上村
- ええと(笑) そうだなあ、描かれている人が自分は違う人だから、自分と合致しないところをなぜそうなるのかを考えます。あと、役どうしの関係性を考えたり。今回は、ある昼の数時間のお話でとくに大事なことが起こるわけではないので、ひとつひとつの演技を重くしないようにとかも考えています。
- 山村
- 稽古初期で演じられていた「加藤」より、今の稽古での「加藤」の方が若くなった気がします。
- 上村
- そうですね。
- ───
- 都会っぽさがなくなってきた?
- 佐々木
- シティボーイだからな。
- 山村
- 基本上村さんはシティボーイですもんね。最近の「加藤」はテクノとか聞いてるようには、見えなくなってきた。(※普段の上村さんはテクノ音楽が大好きです)
- 上村
- 頑張ります、ご期待に添えるように……
- ───
- 山村さんも今回、いつもの演技の仕方と印象が違うように感じるのですが、「道に迷う旅行者の女」役として何か役作りを考えられているのですか?
- 山村
- 今回私は一人、他の方と違う距離感でセリフを会話することが多いんです。最初はそれを相手に届かせようと思っていましたが、それよりも届けたい人の一歩手前にセリフを落として、あちらから近寄ってきてもらうようにしようと思ってます。そんな女になろうと思って。
- 佐々木
- すごく理論的、わかりやすい!
- 山村
- いろいろ模索してるんです。私もあざといですよー。
- 上村
- 二人ともかっこいいなあ。
- ───
- では最後になりますが、これを読んでいただいている方々へメッセージをお願いします
- 上村
- いつもと違う遊園地がみれると思うので、それを是非観ていただければと思います。よろしくお願いします。
- 山村
- 20年前の戯曲の再演って中々ない機会だと思いますし、舞台設定も70年代で最近の遊園地再生事業団の作品とは違うものが観れると思います。是非観に来ていただきたいです。
- 佐々木
- 「観てよかった」、「お金払ってよかった」って思っていただけるようにみんなで頑張りたいと思います。
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- 今日はお忙しい中ありがとうございました。
(2月27日、森下スタジオにて)

